HISTORY File 004夏競馬デビューの
HEROたち
第1章
夏競馬から誕生する
未来のGⅠホースたち
「夏競馬」での楽しみの一つが、毎週のようにデビューを重ねていく2歳馬の存在だ。
以前は、クラシックを目指していくような馬たちは「秋競馬」でデビューしていく傾向が強かった。しかしここ数年、話題を集めているような評判馬でも、早期にデビューをさせるケースが増えてきた。牧場での育成技術が向上したことが仕上がりの早さに繋がり、早い時期に勝利をあげることで、その後のローテーションを組みやすくなるだけでなく、更なる成長を期して、
更なる成長を期して、育成施設のある牧場での再調整もしやすくなるといったメリットがあるからであろう。また早い時期の新馬戦の条件も、従来のスプリント中心のレースからマイル、中距離と距離の幅が広がり、未来のクラシックホースのデビューが多く見られるようになった。 以前は、クラシックを目指していくような馬たちは「秋競馬」でデビューしていく傾向が強かった。しかしここ数年、話題を集めているような評判馬でも、早期にデビューをさせるケースが増えてきた。牧場での育成技術が向上したことが仕上がりの早さに繋がり、早い時期に勝利をあげることで、その後のローテーションを組みやすくなるだけでなく、更なる成長を期して、育成施設のある牧場での再調整もしやすくなるといったメリットがあるからであろう。また早い時期の新馬戦の条件も、従来のスプリント中心のレースからマイル、中距離と距離の幅が広がり、未来のクラシックホースのデビューが多く見られるようになった。
第2章
クラシックでの
活躍馬の多い
札幌競馬場
夏でも涼しい気候に加えて、クッションの利いた洋芝の上でレースが行われる札幌競馬場は、環境がいいことからこの地でデビューする馬も多く、これまで多数のクラシックホースが送り出されている。ジャングルポケット、タニノギムレットといったダービー馬を筆頭に、2020年にエフフォーリアは札幌でデビューし、翌年皐月賞を制覇。他にも2017年のオークスを制したソウルスターリングや、2016年の皐月賞を制したディーマジェスティも札幌でデビューしている。
中でもジャングルポケットのデビュー戦は「伝説の新馬戦」の一つにあげられており、朝日杯3歳Sの勝ち馬メジロベイリーや、 中でもジャングルポケットのデビュー戦は「伝説の新馬戦」の一つにあげられており、朝日杯3歳Sの勝ち馬メジロベイリーや、東京スポーツ杯3歳S勝ち馬のタガノテイオーが出走していただけでなく、出走馬が全て勝ち上がるというハイレベルなレースだった。
東京スポーツ杯3歳S勝ち馬のタガノテイオーが出走していただけでなく、出走馬が全て勝ち上がるというハイレベルなレースだった。
今後も伝説となるようなレースや競走馬が、札幌から誕生するか注目される。
第3章
2歳戦を盛り上げる
函館競馬場
世代最初の重賞である函館2歳Sが行われることもあり、函館デビューの馬たちが2歳戦線を盛り上げてくれることも多い。2020年に阪神ジュベナイルフィリーズを制し、白毛馬として世界で初めてGⅠ勝利を果たしたソダシや、2012年の朝日杯フューチュリティSを制して2歳チャンプとなったロゴタイプ、同年の皐月賞、菊花賞を含むGI6勝をあげたゴールドシップ、2005年に札幌2歳Sで初重賞制覇をあげた2007年のJRA賞年度代表馬アドマイヤムーンも函館でデビューし、早期から活躍を見せていた。
札幌も含めた北海道シリーズ全体に言えるが、美浦や栗東の競走馬と騎手が一堂に会するのも函館開催の特徴であり、のちにGⅠレースを盛り上げる馬たちが東西から満遍なく誕生している。
第4章
東京芝マイルGⅠと
意外な
繋がりのある
福島競馬場
福島競馬場は全場で最も一周距離が短く、器用に立ち回れる先行馬が有利というイメージがあるが、夏開催の福島競馬場でデビューし、のちにGⅠ馬となる馬たちにはそのイメージとは異なる、ある共通点が見られる。
牝馬三冠を含むGⅠ5勝をあげたアパパネ、香港カップを制し海外G1馬となったノームコア、そして前川清さんの所有馬としても知られているコイウタは夏の福島開催でデビューし、のちにヴィクトリアマイルを制している。また、柴田大知騎手に念願のGⅠタイトルを授けたマイネルホウオウ、当時地方所属の内田博幸騎手に初のJRAGⅠタイトルをもたらしたピンクカメオも福島でデビューし、のちにNHKマイルカップを優勝。 牝馬三冠を含むGⅠ5勝をあげたアパパネ、香港カップを制し海外G1馬となったノームコア、そして前川清さんの所有馬としても知られているコイウタは夏の福島開催でデビューし、のちにヴィクトリアマイルを制している。また、柴田大知騎手に念願のGⅠタイトルを授けたマイネルホウオウ、当時地方所属の内田博幸騎手に初のJRAGⅠタイトルをもたらしたピンクカメオも福島でデビューし、のちにNHKマイルカップを優勝。ピンクカメオが勝利した新馬戦には、安田記念で父エアジハードとの親仔制覇を果たすことになるショウワモダンも出走していた。
ピンクカメオが勝利した新馬戦には、安田記念で父エアジハードとの親仔制覇を果たすことになるショウワモダンも出走していた。
これらの馬は奇しくも東京競馬場の芝マイルGⅠを制しており、小回りの福島競馬場でレースセンスを磨かれたことが、のちの活躍へと繋がっているのかもしれない。
第5章
新潟競馬場から
世界へ
シンボリルドルフ、オルフェーヴル、アーモンドアイ。この3頭はいずれも新潟デビューから三冠馬に輝いた。その他にも2019年のダービー馬ロジャーバローズ、阪神ジュベナイルフィリーズ、大阪杯、エリザベス女王杯と阪神競馬場で異なるGⅠ競走3勝を挙げたラッキーライラック、ファン投票で出走馬を決めるレースである宝塚記念、有馬記念をともに制したドリームジャーニーもまた、新潟デビューである。
近年、次々とGⅠ級の大物が誕生している新潟デビュー馬たちだが、その活躍は日本国内だけに留まらない。前述したオルフェーヴルとアーモンドアイも海外で実績を残した名馬であるが、他にもドバイデューティフリーをレコードタイムで優勝し、その年のワールドベストレースホースランキングにおいて、日本競馬史上初めて1位となったジャスタウェイがいる。また今年のドバイワールドカップデーにおいては、 近年、次々とGⅠ級の大物が誕生している新潟デビュー馬たちだが、その活躍は日本国内だけに留まらない。前述したオルフェーヴルとアーモンドアイも海外で実績を残した名馬であるが、他にもドバイデューティフリーをレコードタイムで優勝し、その年のワールドベストレースホースランキングにおいて、日本競馬史上初めて1位となったジャスタウェイがいる。また今年のドバイワールドカップデーにおいては、新潟デビューのイクイノックスとウシュバテソーロがそれぞれドバイシーマクラシック、ドバイワールドカップを優勝。2019年のJRA賞年度代表馬に輝いたリスグラシューも新潟でデビューし、オーストラリアのG1であるコックスプレートを制している。
新潟デビューのイクイノックスとウシュバテソーロがそれぞれドバイシーマクラシック、ドバイワールドカップを優勝。2019年のJRA賞年度代表馬に輝いたリスグラシューも新潟でデビューし、オーストラリアのG1であるコックスプレートを制している。
新潟の長い直線は世界の大レースへ飛び立つ滑走路と言ってもいいのではないだろうか。今後も世界で活躍するような馬が新潟から誕生するのか、注目される。
第6章
西のスターが集う
中京競馬場
中京競馬場で夏の新馬戦が行われるようになったのは2012年からである。それだけに他の競馬場と比較すると、夏の中京デビューのGⅠ馬の数は決して多いとは言えないが、その中でも日本ダービー馬であるワグネリアンや、桜花賞で最後方から他馬をまとめて差し切ったハープスターが中京でデビューを飾っている。ワグネリアンはデビューから福永祐一騎手(現調教師)とコンビを組み、ダービージョッキーの称号を与え、ハープスターはデビューから川田将雅騎手とコンビを組み、川田騎手がトップジョッキーへの道を切り拓くきっかけともなった。
このように中京デビュー馬の活躍や、新潟と同様に直線の距離が長いことなどから、近年では栗東所属の評判馬のデビューも多い。クラシックでの活躍をはじめ、競馬界を盛り上げる名馬が、中京競馬場からも多く誕生していくことだろう。
第7章
年々目が離せない
小倉競馬場デビュー
2005年に小倉でデビューをしたメイショウサムソンは、小倉デビューの馬として初めてダービー馬となったが、昨年の日本ダービーを制したドウデュースもまた夏の小倉デビューである。2014年のダービー馬ワンアンドオンリーも小倉でデビューしており、近年は小倉デビューの馬も見逃せないものとなっている。
小倉デビューのGⅠ馬たちは、クラシックでの活躍よりも、古馬となってから能力を開花させたケースも多い。ヒシミラクルは菊花賞を制した後、4歳時に天皇賞(春)と宝塚記念を優勝。ラブリーデイは5歳の中山金杯で重賞初勝利をあげると、その年には宝塚記念と天皇賞(秋)を含めた重賞6勝の活躍で、 小倉デビューのGⅠ馬たちは、クラシックでの活躍よりも、古馬となってから能力を開花させたケースも多い。ヒシミラクルは菊花賞を制した後、4歳時に天皇賞(春)と宝塚記念を優勝。ラブリーデイは5歳の中山金杯で重賞初勝利をあげると、その年には宝塚記念と天皇賞(秋)を含めた重賞6勝の活躍で、その年のJRA賞最優秀4歳以上牡馬に輝いている。小倉で初戦を飾り、3歳時に秋華賞を制したクロノジェネシスは、4歳時の宝塚記念と有馬記念、5歳時に宝塚記念を連覇するなどの活躍を見せた。
その年のJRA賞最優秀4歳以上牡馬に輝いている。小倉で初戦を飾り、3歳時に秋華賞を制したクロノジェネシスは、4歳時の宝塚記念と有馬記念、5歳時に宝塚記念を連覇するなどの活躍を見せた。
今後も小倉でデビューを果たす2歳馬たちは、クラシック戦線での活躍だけでなく、古馬となってからも息長く応援できる馬となっていくに違いない。
第8章
ヒーローへの第一歩
競走馬たちはクラス分けをされて、クラスごとにレースを走るのが基本となっているが、新馬戦に限っては分け隔てなく様々な実力の馬が一緒に走るレースである。全てのヒーローたちの第一歩となるのが新馬戦で、将来の競馬界を賑わすヒーローを探し出すということも、新馬戦の大きな楽しみの一つである。
一方で全てのヒーローがデビューから順当に勝ち上がっているとも限らない。デビュー戦を勝利で飾れなくても、メイショウサムソンやワンアンドオンリーはダービー馬に輝き、 一方で全てのヒーローがデビューから順当に勝ち上がっているとも限らない。デビュー戦を勝利で飾れなくても、メイショウサムソンやワンアンドオンリーはダービー馬に輝き、アパパネやアーモンドアイは三冠馬となっている。デビュー勝ちをすることがすべてではなく、レースを使われながら力を付けていく馬も多くおり、敗戦の中でも才能の片鱗を見つけ出すという楽しみもある。
アパパネやアーモンドアイは三冠馬となっている。デビュー勝ちをすることがすべてではなく、レースを使われながら力を付けていく馬も多くおり、敗戦の中でも才能の片鱗を見つけ出すという楽しみもある。
これからも夏の新馬戦からは目が離せない。
夏競馬の中心となる競馬場と、
そこでデビューした
クラシックレース優勝馬※2000年以降デビュー馬
札幌競馬場
4コーナーからゴール板までの距離は函館競馬場に次ぐ短さ。芝コースの水はけが抜群で、馬場状態が重になることは少なく、これまで※不良になったことがないほどだ。
2020年8月23日に芝2000mの新馬戦でデビューしたエフフォーリアは、4戦無敗で皐月賞を制覇。同年秋には、3歳馬ながら天皇賞(秋)と有馬記念を制し、2021年のJRA年度代表馬に選出された。
※2023年6月2日現在
函館競馬場
1896年に開場と、日本で最も長い歴史を持つ競馬場で、直線の距離はJRA全場の中で最も短い。世代最初の重賞である函館2歳ステークスが行われる。
2012年6月24日に芝1200mの新馬戦でデビューしたロゴタイプは、2歳時に朝日杯フューチュリティSを制し2歳チャンプに輝く。その後3歳時に皐月賞、6歳時に安田記念を制するなど息の長い活躍を見せた。
新潟競馬場
芝の外回りコースで658.7mという日本一長い直線を有し、日本で唯一直線だけのレースがある競馬場。
2017年8月20日に芝1600mの新馬戦でデビューしたラッキーライラックは、エリザベス女王杯2連覇を含むGⅠ4勝。香港ヴァーズで2着に入るなど、海外でも活躍を見せた。
福島競馬場
JRA全場の中で一周距離が最も短いが、一周する間にアップダウンを2回繰り返すユニークな競馬場。夏競馬開催は8日間のみと中京と並んで最も少ない。
2012年6月23日に芝1800mの新馬戦でデビューしたマイネルホウオウは、2013年にNHKマイルカップを優勝。鞍上の柴田大知騎手にデビュー18年目で初めての平地GⅠ勝利と通算200勝目を授ける記録的な勝利であった。
中京競馬場
2012年にリニューアルオープンし、それと同時に夏の新馬戦が行われるようになった。直線を向いてすぐの地点に急坂が設けられており、タフな競馬場と言われている。
2013年7月14日に芝1400mの新馬戦でデビューしたハープスターは、2014年の桜花賞を制覇。最後方からレースを進め、直線だけで他馬をまとめて差し切るという派手なレースは今なお語り継がれている。
小倉競馬場
一周距離は福島競馬場に次ぐ短さであり、平坦なコースで坂は設けられていない。
2018年9月2日に芝1800mの新馬戦でデビューしたクロノジェネシスは、牝馬ながら宝塚記念2連覇、有馬記念優勝などGⅠ4勝。2020年の宝塚記念での6馬身差での勝利はレース史上最大着差となっている。