障害重賞9連勝という偉業は「絶対王者」と呼ばれる所以である

オジュウチョウサンは2013年秋にデビューし、平地で2戦するも勝つことができず、故障による休養が明けた翌年の秋に障害に転向した。

障害馬として素質を開花させるきっかけとなったのは、石神深一騎手との出会いだった。石神騎手は、メンコの耳を覆う部分を外すことを調教師に進言。それが奏効してレースに集中するようになり、16年の中山グランドジャンプでＪ・ＧⅠ初勝利を挙げると、連勝街道を突き進む。18年の中山グランドジャンプまで、Ｊ・ＧⅠ5連勝を含む障害重賞9連勝という偉業をなし遂げ「障害界の絶対王者」と呼ばれるようになった。

ジャンパーとして絶頂期にあったオジュウチョウサンは、18年、平地との「二刀流」にチャレンジすることになった。武豊騎手を新たな鞍上に迎え、開成山特別、南武特別を連勝。続く第63回有馬記念では、勝負所から一気に進出してスタンドを沸かせたが、直線で伸び切れず、9着。敗れはしたものの、武騎手は「4コーナーでの走りは、乗っていて感動しました」とパートナーを讃えた。

翌19年、石神騎手に手綱が戻って中山グランドジャンプを完勝。20年の同レースも制して同一J・GⅠ5連覇の偉業を達成した。21年の中山大障害を勝利して「限界説」を吹き飛ばすと、11歳になった22年の中山グランドジャンプにも勝って、Ｊ・ＧⅠ9勝目を挙げた。
今後この記録を超える名馬は現れるのだろうか。

競走馬として足かけ10年。不屈の精神で、40戦を走り切った。