「変則二冠」制覇し、日本の競馬界に輝かしい蹄跡を残した

デビュー以来5戦にわたり、1800ｍから2200ｍまで様々な距離を使われたのは、史上初の偉業達成に向けての伏線だった。その偉業とは、ＮＨＫマイルＣと日本ダービーの「変則二冠」制覇である。

安藤勝己騎手を背にしたキングカメハメハは、2004年のＮＨＫマイルＣを5馬身差で圧勝。レースレコードのおまけ付きで最初の関門をクリアした。

管理する松田国英調教師は、2001年にクロフネ、2002年にはタニノギムレットと、2年連続で管理馬を「変則二冠」に送り込んでいたが、クロフネは1、5着、タニノギムレットは3、1着と、念願は叶えられなかった。2頭の名馬でさえも達成できなかった難しいチャレンジであった。

しかし、安藤騎手はダービー制覇に揺るがぬ自信を抱いていた。マイル向きの馬ではないにもかかわらず、ＮＨＫマイルＣで2着以下を大きく突き放したからだ。ダービーはどんなレースをしても負けないと思ったので、家族を競馬場に呼んだという。結果、キングカメハメハは、第71回日本ダービーを1馬身半差で完勝した。「馬の力だけで勝ちました。追えばどこまででも伸びる馬です」と、安藤騎手はパートナーを絶賛した。

松田調教師が「変則二冠」にこだわったのは、スピードとスタミナの両方を高いレベルで持つことを証明し、種牡馬としての価値を高めるためだった。種牡馬となったキングカメハメハは多くのＧⅠ馬を送り出し、2度リーディングサイヤーになるなど、日本の競馬界・生産界に輝かしい蹄跡を残した。