STORY 7 黒岩 悠騎手 対談 Interview with
Jockey Yu Kuroiwa
取材後記

滋賀県栗東市にあるJRAの栗東トレーニング・センターにて、2023年中山グランドジャンプでイロゴトシに騎乗しJ・GI初制覇を果たした黒岩悠騎手と対談。さらには障害馬の調教や障害の調教コースを見学。

競馬ファンとして、アスリートとして。
萩野公介が「いま注目のジョッキー」と「障害の調教」を取材してきた。

黒岩悠ジョッキーとの対談

———本日はSTORY 6と同様、栗東トレーニング・センターにて、障害レースで活躍する黒岩悠騎手との対談、さらには障害特有の調教を黒岩騎手に解説してもらいました。初めてお会いされたそうですが黒岩騎手の印象はいかがでしたか?

僕よりも年齢が10歳ほど上の方ですが、色々な質問に対してすごく丁寧に答えてくださるなど、本当に優しい方だなと思いました。
印象的だったのは、「馬の邪魔にならないように、持っている能力を最大限引き出してあげる」であったり、「関係者の皆さんに感謝しています」、さらに「ジャンプ界を盛り上げていきたいです」など、自分のことだけでなく周囲への気配りや、障害界全体のことを考えての発言が多くあったことでした。素敵な考えだなと思いましたし、それが黒岩さんの強さでもあるのだなと思いました。

怪我に悩み、なかなか勝ち星がなかった時期は悔しい思いをされたはずですが、そういう経験があるからこそ、そして謙虚な人柄だからこそ、運命的なご縁を通じて巡ってきたチャンスを結果に結びつけられたのだと思います。

障害レース特有の調教方法

———まずは調教スタンドから、朝の調教を見学していただきました。

これまで障害の調教というのは見たことがなかったんですが、「最初は跳ばない」ということに驚きました。
障害の調教イコール跳ぶことだと勝手に想像していましたが、最初は「こういう置き障害があるんだよ」というのを実際に馬に見せて、理解させるという跳ばない練習も繰り返して行うことを初めて知りました。
馬に置き障害をちゃんと認識させてから跳ぶ練習に移るという丁寧な調教を通じて、ジョッキーの馬への愛情を感じずにはいられませんでした。

———その後、スタンドから降りて、実際の調教コースを間近でご覧いただきました。

実際に障害のコースに出てみて、こんなに高くて奥行きのある置き障害を跳んでいるのか、というのが一番の驚きでした!
だからこそ障害のレースに出ている馬たちのすごさを感じましたし、実際に跳んでいる置き障害の実物を間近で見て、時間をかけて丁寧に調教する理由が分かりました。

最初は丸太1本、10cmぐらいの高さから練習していくそうですが、それでも怖がる馬もいるとのことでした。慣れてきたらそこからちょっと丸太を太くして、さらに50cm、100cmと段階的に上げていきます。
最終的には背の高さぐらいの障害を5m手前ぐらいから踏み切って跳んだりするという話を聞いて、本当にすごいなと思いました。
トレーニングに関しては、「時間はいくらあっても足りないです」と黒岩騎手がおっしゃっていたのですが、確かにこれだけ段階的に教える必要があると、調教の大変さを身に染みて感じました。

そして障害レースは、通常の競馬よりもさらに危険と隣り合わせのため、レースに出ている競走馬、ジョッキー、さらに厩舎関係者をはじめとするいろいろな方々の地道な努力があって、安全な競馬が成り立っています。今回の取材を通じて、また違った目線で障害のレースを見られるようになりましたし、競馬の楽しみがまたひとつ増えました。

障害レースというものを肌で感じて

———萩野さん自身のご経験や水泳と通じるものもあるのでしょうか?

馬も人間と同じように「動物」であり、恐怖心やネガティブな気持ちが出るのではないかと思います。
それをどうコントロールするのかで結果が変わってきます。
黒岩騎手は、自分の取った行動や動作はすぐに馬に伝わるし、成績にも繋がるとおっしゃっていました。僕はジョッキーではないですし分からない部分もたくさんありますが、ジョッキーが怖がったら馬も怖いと感じるでしょうし、ジョッキーが余裕を持てていたら馬も安心するかもしれません。
「動物がレースをする」という意味では競馬と競泳も、その瞬間に懸ける想いみたいなものも含めて共通点の多い競技ですし、親近感を覚えます。

———今日一日を振り返っていかがでしたでしょうか?

今回は障害レースがテーマで、黒岩騎手に調教やレースについて丁寧に教えていただきました。もちろん障害レースは見たこともありますが、レースや調教が、どういう風に行われているのか知らなかったので、多くのことを学ぶことができてすごく嬉しかったです。

黒岩騎手の障害レースに対する熱い想いや意気込みなどをお聞きし、優しい人柄にも触れることができて、僕自身とても貴重な経験だったなと思います。

いままで出会ったホースマンたちもそれぞれに熱い想いやドラマがありますよね。
そういったものに触れられるというのが、僕には何よりも幸せなことです。
今日一日を通して多くのことを知ることができましたし、黒岩騎手と時間を共に過ごせてすごく楽しかったです。競馬に携わる人の熱量というんですかね、そういうものを肌で感じることができ、とても貴重な経験でした。
黒岩騎手のますますのご活躍を期待しています!

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