障害レース特有の調教方法
———まずは調教スタンドから、朝の調教を見学していただきました。
これまで障害の調教というのは見たことがなかったんですが、「最初は跳ばない」ということに驚きました。
障害の調教イコール跳ぶことだと勝手に想像していましたが、最初は「こういう置き障害があるんだよ」というのを実際に馬に見せて、理解させるという跳ばない練習も繰り返して行うことを初めて知りました。
馬に置き障害をちゃんと認識させてから跳ぶ練習に移るという丁寧な調教を通じて、ジョッキーの馬への愛情を感じずにはいられませんでした。
———その後、スタンドから降りて、実際の調教コースを間近でご覧いただきました。
実際に障害のコースに出てみて、こんなに高くて奥行きのある置き障害を跳んでいるのか、というのが一番の驚きでした!
だからこそ障害のレースに出ている馬たちのすごさを感じましたし、実際に跳んでいる置き障害の実物を間近で見て、時間をかけて丁寧に調教する理由が分かりました。
最初は丸太1本、10cmぐらいの高さから練習していくそうですが、それでも怖がる馬もいるとのことでした。慣れてきたらそこからちょっと丸太を太くして、さらに50cm、100cmと段階的に上げていきます。
最終的には背の高さぐらいの障害を5m手前ぐらいから踏み切って跳んだりするという話を聞いて、本当にすごいなと思いました。
トレーニングに関しては、「時間はいくらあっても足りないです」と黒岩騎手がおっしゃっていたのですが、確かにこれだけ段階的に教える必要があると、調教の大変さを身に染みて感じました。
そして障害レースは、通常の競馬よりもさらに危険と隣り合わせのため、レースに出ている競走馬、ジョッキー、さらに厩舎関係者をはじめとするいろいろな方々の地道な努力があって、安全な競馬が成り立っています。今回の取材を通じて、また違った目線で障害のレースを見られるようになりましたし、競馬の楽しみがまたひとつ増えました。