萩野公介×JRA THE STORIES

STORY 5 坂井 瑠星騎手 対談 Interview with Jockey Ryusei Sakai 取材後記

今回、萩野公介が対談したいジョッキーとして選んだのは、2022年10月の秋華賞でJRA・G初制覇を果たした、若手の注目株である坂井瑠星騎手。競馬ファンとして、アスリートとして。萩野公介が「ジョッキー・坂井瑠星」から感じたこととは。

アスリートだなと感じた坂井瑠星騎手

———本日は坂井瑠星騎手と対談していただきました。世代的にも近く、アスリートという共通点もありましが、対談を終えて、率直な感想はいかがでしょうか?

年齢が自分と近いということもあって、とても話しやすかったです。

騎乗した馬の印象を必ずメモに残すことや、休みの日も研究を欠かさないという話、トレーニングへの考え方や、今年キャリアハイの成績を残している要因など、ご自身の言葉で語ってくれましたが、感覚としては「やはりアスリートだな」と感じました。また、ジョッキーという職業に誇りを持っていて、かつ競馬が大好きなんだなという印象を受けました。

———STORY1では競馬学校を取材していただきましたが、競馬学校の未来のジョッキーたちと比べて、現役ジョッキー、しかも若手のホープである坂井瑠星騎手は違いがありましたか?

もちろん違いはありますが、一方で根本的な部分は変わらないとも感じました。やはり競馬が好きで、周りの人に感謝をしながら、いま自分ができることを全力でやる。競馬学校での教えがあって、そこから成長してプロのジョッキーになってからも、軸となる部分は変わっていないのだなと思います。

競馬学校で生徒たちに「みんなの夢は何ですか?」という質問をさせていただきましたが、今日も坂井瑠星騎手に「夢は何ですか?」と聞いたら、「世界に羽ばたいていくようなジョッキーになりたい」と答えてくれました。

様々な経験を通して、自分が目指すジョッキー像や人物像が具体的になり、より明確な目標が見えてくるのだと思いますが、夢を語る眼差しや、そこに込められている熱い思いは共通しているように感じました。

ストイックにやってきた、とは思っていない。

———子供の頃から騎手になるために過ごしてきたというお話もありましたが、萩野さん自身も幼少期からストイックに練習をしてきたと思います。共感する部分も多かったのではないでしょうか。

僕自身は水泳をストイックにやっていたな、とは思っていません。自分の中ではそれが当たり前だったからです。坂井瑠星騎手も子供の頃、大井競馬場に行くことが当たり前で(※父は大井競馬の元騎手で現調教師)、周りの子供たちと遊ぶことよりも、競馬を見る方が楽しかったのではないかと思います。それを子供の頃からストイックに努力してきた、とは坂井瑠星騎手も考えていないのではと思います。

僕自身も、もちろん毎日練習をしていましたし、たくさん泳いでいましたけど、だからといって誰かに「毎日練習頑張っているぞ!」とは言わなかったです。なぜかと言うと、水泳が好きで、やりたくてやっていたからです。

坂井瑠星騎手も、こちらから聞かなかったら「自分が陸上部に入ったのは競馬学校に入るためです」と自分からは言わなかったと思います。なぜならそれ自体も、人生において当たり前の決断だったからだと思います。

僕は水泳が好きということと同様に、陸上をやっている人は陸上競技が好きで、競馬関係者も競馬が好き。根元には「好き」という気持ちがあって、自分が好きなものに誇りを持っている。自分がやりたいと思ったことを行動に移すことは、何よりも大切だと思います。

STORY1〜5を終えて。

———STORY1から全5回にわたり取材・対談をしていただきました。いかがでしたか。

この企画を通して、見てくださっている方が「競馬っていいな」と少しでも感じてもらえたらこんなに嬉しいことはありません。STORY4で矢作芳人調教師からも「競馬を広める」という大役を任命されていますから(笑)。

僕自身はTHE STORIESを通して、これまで見ることが出来なかった光景や、会うことが出来なかった人たちにたくさん出会えました。頑張っている人たちの熱意を肌で感じることで刺激をもらいましたし、より競馬というスポーツが好きになりました。でもこれは、競馬だけでもスポーツの世界だけでもなくて、世の中の全ての仕事をしている方に共通することだと思うのですが、自分がやりたいことを真剣に考えて、熱意を持ち取り組んでいる人たちの思いは、何ものにも代え難いですよね。

今日、STORY5を撮り終わって、STORY1の競馬学校から振り返ってみたら、1から5まで綺麗に繋がったなと思いました。競馬というスポーツは誰か一人で成り立っているわけではなく、競馬学校があって、生産牧場や育成牧場があって、調教師や騎手がいて、さらにそれを支える多くの人たちがいて、すべてのホースマンがプライドを持って仕事をしています。そしてその熱意やプライドの上に、「競馬」というスポーツが創り上げられているのだと改めて感じることが出来ました。

そういった競馬に関わる全ての人たちの情熱があるから、僕たちファンは「競馬」というスポーツに惹きつけられるのだと思います。

これからも多くのホースマンと出会いたいし、ファンとして「競馬」の魅力を発信していきたいと思います!

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