萩野公介×JRA THE STORIES

STORY 3 日高育成牧場 Hidaka Training and
Research Center
取材後記

北海道・浦河町で競走馬の育成を行う日高育成牧場。1500haという広大な敷地を誇るこの牧場を1日かけて体験取材。競馬ファンとして、アスリートとして。萩野公介が「日高育成牧場の1日」を振り返る。

圧倒的な敷地面積を誇る研究施設

———本日は日高育成牧場で1日過ごしていただきました。朝は牧場全体が見渡せる見晴台からのスタートでした。まず、施設全体の印象はいかがでしたか?

本当に小学1年生みたいな感想ですけど、とにかく広いな〜と。「どこまでが敷地なんですか?」という純粋な疑問がまず頭に浮かびました。まさに北海道という圧巻の景色でしたね。厩舎を含め、放牧やトレーニングできる場所などこの広い敷地を活かした施設がそれぞれに点在していて、とても見応えのある1日でした。

馬場は、芝、ダート、ウッドチップ、さらに冬でも調教できるように屋根付きのコースなどバリエーションも豊富。1日600頭がトレーニングしていて、広さも渋谷区ぐらいとのことでしたから、スケールが桁違いですよね。

また研究施設という側面もあり、莫大なデータを競馬サークル全体に還元するために日々研究されているというお話もありました。「強い馬づくり」の探求とその普及のために、試行錯誤しながら研究が進んでいる。この場からすでにレースがスタートしているのだなと思いました。

栄養管理や体調管理、そして「育てる」ということ。

———体重や体高測定、レントゲンでの検査、また飼料などの栄養管理も見学いただき、牧場のスタッフさんともお話されていましたが、水泳と通ずるものもありましたか?

水泳もスタートしてゴールするという凄くシンプルなスポーツです。誰が一番早くゴールにたどり着くかと、ルールとしてもとても分かりやすい。だけど体を酷使するという点では、怪我とはどうしても隣り合わせなところもある。水泳だけじゃなくどのスポーツでも言えることですが、怪我がなければない分だけ有利とも言えます。怪我を防ぐための栄養補給、最大酸素摂取量や乳酸値、血液の検査など科学的なものも含めて、体調管理はとても重要です。また普段の食事への配慮という点においても、僕も気を遣っていましたので共通する部分は多くありました。スタート地点に立つまでの間にも多大な準備が競馬にもあるのだと再認識しました。

———午後には馴致(じゅんち)も見学しました。

馴致というものを今日初めて見させていただきました。馬も最初は水をかけられるのが怖いから、足首までシャワーをかけて徐々に慣れさせていくとか、腹帯を締めるのも最初は苦しいというのもあるので、タオルを掛けて慣れさせていくという作業もそうですが、一つ一つがとても繊細で地道な作業でした。しかしそれが「育てる」ということであり、「出来ないことを出来るようにしていく」ということですよね。先日の社台スタリオンステーションで出会ったGⅠを制したような馬たちは、一つの「答」になった馬たちだと思います。でも同じ馬というのはいませんから、それぞれの馬に合った育成を探してパズルみたいに組み合わせていく。突き詰めていったら答は無限にあるなと感じましたし、その奥深さも競馬の一つの魅力だと思いました。

人生というレースの途中

———最後に、場長と乗馬も体験いただきました。そこでのお話しも含めて、今日一日を振り返っていかがでしたか?

今日取材をさせていただいた日高育成牧場というところは、育成をメインとしながら生産もするという、日本の中でも最大級の施設でした。

最後、場長と乗馬をさせていただいている時に、「萩野さん、大学院でお忙しいですか」と質問していただいて、僕の近況を少しお話しさせていただく時間もありました。

まだ水を怖がったり、人にも慣れていない当歳馬たち。以前、競馬学校で出会った夢を抱く学生さんたち。種馬場で出会った貫禄のある名馬たち。競馬で例えるなら、みんなもそれぞれの人生というレースの途中。自分の人生と重ね合わせたときに、自分自身も同じ局面を走っているという実感が湧き、何かとても不思議な気持ちになりました。

そんなことを最高な天気と環境の中、馬に乗りながら場長とお話することができ、とても優雅で、贅沢な時間を過ごさせていただきました!

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