萩野公介×JRA THE STORIES

STORY 2 社台スタリオン
ステーション
Shadai Stallion Station 取材後記

北海道勇払郡安平町にある、社台スタリオンステーション。日本の競馬界を代表する種牡馬の牧場を萩野公介が取材。名馬との出会い。そして、競馬を支える血統と触れ合うことで見えてきたものは。競馬ファンとして、アスリートとして。萩野公介が種馬場で感じたことを振り返る。

名馬たちとの再会

———1日お疲れ様でした。最初にコントレイル、キタサンブラック、エピファネイア、キズナといった、競走馬としてGⅠを制覇した名馬たちが続々と目の前に現れました。いかがでしたでしょうか。

やはりGⅠを勝った馬、名馬と言われる馬たちがここに集まっているということで、みんなかっこ良かったですし、オーラもあって、圧倒されましたね。馬たちが現役の頃を思い浮かべながら見させていただいて、懐かしいなって思いつつ、キズナがダービーを勝ったのなんてもう10年近く前なんだ、なんてことを思いながら感慨深い気持ちになりました。

特に、今日見ることができた馬たちは頂点まで上り詰めた馬なので、やっぱり貫禄もありましたし、引退をして種牡馬になり、いまはレースに出ているわけではないですけれども、血統表には名前が残っていくので、いまも競馬界において大きな役割を担っていますよね。そこがまた競馬の醍醐味の一つだと思います。

ブラッドスポーツとしての競馬

———社台スタリオンステーションでは多くの名馬たちが種牡馬として活躍しています。萩野さんは血統もかなりお詳しいようで、事務局の徳武さんともお話が弾んでいらっしゃいましたね。

アテンドしてくださった徳武さんから血統の話を中心に色々お伺いしました。例えばお父さんがこの馬だからこういう体のつくりになっているとか、お母さんの影響が強く出ている体だとか、お父さんと比べてこの馬は後ろの脚の動きがこうだとか、そういう話をしていただきました。水泳にも共通している部分ですけど、馬も体が剥き出しじゃないですか。だから筋肉の動きとかが凄く分かりやすいんです。それを見るのがもともと好きっていうのもあって。だから馬が歩いている姿とか好きですし、パドックもじっくり見るタイプです。例えばキタサンブラックは推進力を真っすぐ前に向けている歩き方であるとか、体のバランスのお話しもさせていただいて、すごく興味深かったです。僕自身は普段、競馬の予想も血統から入るタイプなので、ブラッドスポーツとしての競馬の側面を垣間見ることができて、すごく楽しかったですね。

自分の両親はアスリートでも何でもないんですけど、競馬の場合もお父さんは長距離が得意だったけど子供は短距離が得意という場合もあるでしょうし、お母さんは芝が得意で子供はダートの方が得意だけど体つきは似ているとか、様々な血統の受け継がれ方がありますよね。

人間が計算した通りに父母の特徴がうまく受け継がれたり、逆に計算してもできないようなこともたくさんあるでしょうし、そういうもの全部含めて「ブラッドスポーツとしての競馬」の魅力だと思うんですよね。それは他の競技にないところだと思います。

いま僕らが見ているレースは「しずく」でしかない。

———その後、社台グループの礎を築いた名馬たちの墓地も見学していただきました。受け継がれてきたもの、受け継いでいくもの、その先にあるもの。今回の取材を経て、競馬の見方、楽しみ方もまた変わりますか?

今年新しく種牡馬として導入されて、初めて種付けをしたとしたら、その産駒がデビューするのってまだあと3年後じゃないですか。お父さんは日本で活躍して種牡馬になったけど、正直子供がどういう成績が出るか、活躍できるかなんて現時点では分からないわけですよね。そういうのも含めて「待つ期間」みたいなものがあると思います。今日、実際に種牡馬を見学させていただいたことによって、そういった待つ期間もまた楽しみになったなと思いますね。例えばオルフェーヴルの子供がレースに出る時になったら、そういえばオルフェーヴルを見に行った時にこういう感じだったなみたいなことをやっぱり思い出すわけです。(前回ロケに行った)競馬学校の時もそうでしたけれども、彼ら彼女らは努力して厳しい門を通ってきて、更にまたトレーニングや勉強だったり、日々頑張って色々なことを吸収しながら成長し、きっと数年後、活躍する姿を僕に見せてくれる。またひとつ数年後の出会い、楽しみが増えましたね。

結局、僕達が見ているレースっていうものは、本当に最終的に出来上がった「しずく」みたいなものだと感じます。レースまでの過程にたくさんの人の努力があることをまた知ることができました。牧場の方の努力だったり、ジョッキーの努力であったり、そういった無数の努力から生まれる「しずく」=「レース」を、これからもより一層楽しみたい。そして、血統から予想する派の僕としては、種馬場の見学はまさに至福の時間。大いに楽しませていただきました! という感じですかね(笑)。

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