取材後記

STORY 10 うみかぜホースファーム

JRAはこれまでも継続的に馬事文化の普及活動を行ってきたが、近年、その重要性が広く認識されてきている。
そもそも馬なくして競馬はありえない。
その資源たる馬を保護し、競馬はもちろん、それ以外でも幅広く活用していく必要がある——。

「岡部幸雄元騎手に会いに行く!」
現在、沖縄で日本在来馬の保護・普及活動を行っている岡部幸雄元騎手を、アスリート・萩野公介が訪ねた。

中央競馬のない沖縄という地

——今回は沖縄まで足を運んでいただきました。このロケが決まったときのお気持ちはどんなものでしたか?

この「THE STORIES」で、馬産地として北海道や九州にも行かせていただきましたが、沖縄は中央競馬においては馴染みのない地域ですので、ロケをすると聞いたときは意外ではありました。
とはいえ、日本在来馬であるヨナグニウマにスポットを当てるという内容で、とても楽しみだなと感じました。

これまで、サラブレッドについてはそれなりの知識があり、実際に見る機会もありましたが、ヨナグニウマや同じく沖縄の在来馬であるミヤコウマについてはほとんど知りませんでした。
そのようななか、沖縄の地で岡部幸雄さんというスーパーレジェンドの元騎手が在来馬の保護・普及活動をされていることを知ってすごく興味が湧きました。また、自分にとって未知な部分も大きかったのでワクワクしました。

——岡部さんとは久々の再会でした。

2022年秋に、中山競馬場で行われたトークショーイベントで初めて岡部さんとご一緒させていただきました。
お会いするのはそれ以来でしたが、お変わりないですね。
馬に跨った時の姿はさすがとしか言いようがありません。
“皇帝”シンボリルドルフの背に乗られていた方ですからね。
ものすごく馬上が似合う方で、すごくかっこいいなと改めて感じました。

——岡部さんを訪ねつつ、さまざまなことを体験しながら日本在来馬についての現状を知っていただきました。

今年の「THE STORIES」は、ここ沖縄と次回の石川県・珠洲市で、在来馬や引退馬支援について触れていきます。
馬事文化には個人的にすごく興味を持っていましたが、一方でなかなか一歩を踏み出せないところでもありました。
今回、幸運にもこういった機会をいただき、実際に触れてみたところ、馬や周りの方たちにすんなりと受け入れてもらえました。

躊躇せずスッと踏み出せば、馬たちをもっと身近に感じられ、自分も馬事文化を支えていけるんだと実感できます。
皆さんにも、僕が味わった感動が伝わればと切に思います。

「美」を競う競馬や、「水」の中で楽しむ遊び

——琉球競馬はご存じでしたか?

琉球競馬という言葉を聞いたことはありましたが、それがどんな競技なのかはわかっていませんでした。
今回、琉球競馬が何を競うものなのかを教えていただき、馬場跡(昔は競馬場だった場所)を訪ね、うみかぜホースファームで岡部さんと田中勝春さんによるデモンストレーションを観戦するという、本当に貴重な体験をさせていただきました。

——その際に、審査員も務めました。

審査基準のすべてを理解したわけではないと思いますが、「右前脚と右後脚、左前脚と左後脚を同時に動かす側対歩(そくたいほ)で移動しながら、速さではなく、その脚の運びのリズムや馬の姿勢の美しさを競う」という初歩の知識をもとに審査させていただきました。

素人目で見ても、今回は勝春さんのほうの馬の脚の運びが美しかったです。
もちろん、騎手の技術だけでなく、その瞬間の馬の状態や気持ちなど様々な要素が影響し、すべてがうまく運ぶかどうかが鍵になります。それは通常の競馬も同じで、強い馬と上手い騎手が必ず勝つとは限りません。それも、競馬という競技の奥深さのひとつだと思います。

——海馬遊びも体験していただきましたが、泳ぎのプロでも、馬の尻尾につかまって泳ぐのは初めてですよね?

これまでの人生で数えきれないほど泳いできましたが、これは初体験でしたね(笑)。
ものすごく楽しかったです!
海が綺麗で、ロケーションも最高でした。

それと、尻尾の根本あたりは意外と固いことを知りました。
先のほうは毛しかないのでしっかりと握っていましたが、思っていたよりスピードが速かったのでしっかり握っていないと飛ばされそうでした。

——岡部さんが意識的にスピードを上げていたように見えました(笑)。

溺れる心配がないと思われたのか(笑)、かなり速かったですね!

岡部さんが楽しそうに沖縄で活動されているのを間近で見ることができたのが競馬ファンのひとりとして嬉しかったですし、こんな元気なお姿をお届けすることができて、ファンの方にも喜んでいただけるのではないかと思います。
ここ沖縄はいまの岡部さんのホームタウンで、この地で生き生きとされていたのが何より印象に残りました。
その生活を支えているひとつは間違いなく「馬」なんだと思います。

——今回のロケの総括をお願いします。

この動画が、日本の在来馬の利活用や種の保存など、馬たちの明るい未来を描くための一助になれば良いなと考えています。
今以上に馬たちが人々と密接に暮らしていける存在になれば嬉しいです。

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