閃光のような瞬発力で彼はその名を轟かせた

黒く光る漆黒の馬体に、閃光のような瞬発力。見る者に強い印象を与えるこの馬には、キャリアのハイライトと言えるレースが２つあった。

１つは、内田博幸騎手を背に制した2010年の日本ダービーである。７番人気という評価ながら、上がり３ハロン32秒７という驚異的な末脚で優勝。内田騎手にとっても、藤原英昭調教師にとっても、そして平井豊光オーナーにとっても、嬉しいダービー初制覇となった。なお翌週、ワークフォースが英ダービーを勝ち、キングズベスト産駒による、同年日英ダービー制覇という珍しい記録が作られている。

エイシンフラッシュのもう１つのハイライトは、５歳時、2012年の天皇賞(秋)である。７年ぶりの天覧競馬となったこのレースで、同馬に初めて乗るミルコ・デムーロ騎手を背にしたエイシンフラッシュは、直線で内から一気に抜け出して優勝。ダービー以来、２年５カ月ぶりとなる勝ち鞍を挙げた。

ウイニングランでスタンド前に戻ってきたエイシンフラッシュの鞍上デムーロ騎手は、ヘルメットを脱いで貴賓席の天皇皇后両陛下に最敬礼した。これは印象的な名シーンとして、日本の競馬史に刻み込まることになった。

府中で２度輝いたエイシンフラッシュ。2022年のジャパンカップでは、産駒のヴェラアズールが父同様に鋭い切れ味を見せて優勝。種牡馬としてのＧⅠ初制覇は奇しくも府中が舞台であった。